ビザンツ様式
ビザンツ帝国の美術、文化の様式。ドーム建築とモザイク絵画が特徴。
ビザンツ帝国のもとで展開された、6世紀ごろを頂点とする建築や美術上の一つの様式。ギリシア・ローマの古典文化を継承し、東方の要素も取り入れて形成された。中世ヨーロッパの教会建築にも影響を与え、11世紀のロマネスク様式に継承される。
ビザンツ様式の特色
要点はドームとモザイク画による装飾。ドーム(大円蓋)を中央にもち、周辺に小ドームを配置する形態をとり、壁面には、モザイク壁画・フレスコ画で美しく装飾されている。絵画ではその他に、ギリシア正教の聖具として使われたイコンも美術的価値が高い。
ビザンツ様式の具体例
コンスタンティノープルのハギア=ソフィア聖堂がその代表例。6世紀にユスティニアヌス帝が建造したものであるが、オスマン帝国に征服されてからはイスラーム教のモスクとして改造された。モザイク壁画の代表的な遺品としては北イタリアのラヴェンナ(一時、西ローマ帝国の都であったが、ユスティニアヌスの時東ローマ領となり、総督府が置かれた)にあるサン=ヴィターレ聖堂である。
ロマネスク様式
11~12世紀のヨーロッパの建築、美術の様式。
11~12世紀に、ビザンツ様式についでヨーロッパで広がった建築とそれに付随する彫刻・絵画などの美術様式。12~13世紀にはゴシック様式に移行する。
ロマネスク様式の特色
特色の要点は、厚い壁と小さな窓、円形アーチ。ロマネスク建築は修道院の建築様式として発達したもので、ローマ風の円形アーチをもち、建材は木材と煉瓦であり、厚い石屋根を支えるために太い柱と厚い壁を必要とし、窓も必然的に小さい。全体的に重厚で安定している。装飾も少なく、内部にフレスコ画で壁画が描かれる程度である。
ロマネスク様式の代表例
代表的なロマネスク様式の建築は、フランスのクリュニー修道院、イタリアのピサ大聖堂(それに付属する斜塔が名高い)、ドイツのヴォルムス教会堂(ヴォルムス協約やヴォルムス帝国議会が開催された)などである。
ゴシック様式
13~14世紀のヨーロッパの建築、美術の様式。ロマネスク様式に次ぎ、ルネサンス様式の前に当たる。
西洋美術史において、ロマネスク様式に次いで、12世紀に始まり、13~14世紀に西ヨーロッパに広がったキリスト教聖堂建築様式と、それに伴う絵画、彫刻などの美術様式。15世紀からはイタリアを中心にルネサンス様式に移行していく。
ゴシック様式の特色
要点は尖頭アーチと薄い壁、広い窓。窓にはステンドグラス。外壁や柱の豊富な彫刻。都市の勃興を背景として、都市民の経済力による大規模な教会堂の建築が始まり、高い尖頭アーチとそれを支える肋骨(リブ)が特徴。天井が高くなったために、窓を広く取ることが出来るようになり、ステンドグラスで装飾されるようになった。
「ゴシック」の意味
ゴシック gothic とは「ゴート人風の」(つまりゲルマン人的、ドイツ的ともとれる)という意味で、16世紀のイタリアにおいて、「ゴート人風の粗野な建築」という軽蔑的な意味をこめて使われた。ルネサンス以降のイタリア人の人間主義、合理主義からみれば、天をつくようなゴシック聖堂は非合理的な、粗野なものと写ったのである。アルファベットの書体の一つ「ゴシック」ゲルマン人の用いていた書体を、典雅なローマン書体に対して無骨な太字であるところから名付けられたものである。 → 東ゴート人
ゴシック様式建築の具体例
最も古いゴシック様式建築はパリのサン=ドニ修道院に見られ、その他、フランスではアミアン、ランス、シャルトル、パリのノートルダム、イタリアではシエナ、アッシジ、ミラノ、イギリスではカンタベリー、ウェストミンスター、ドイツではケルン、シュトラスブルク、フライブルクなどの大聖堂が有名。
参考 ケン=フォレットの歴史小説『大聖堂』
イギリスのスパイ小説作家、ケン=フォレットが1989年に発表した『大聖堂』(The Pillars of the Earth )はめずらしい中世イギリスを舞台にした歴史小説。12世紀イギリスのノルマン朝のマチルダとスティーヴン王の王位継承の争いという史実を背景に、大聖堂の建築に命をかける親子二代にわたる物語である。ヨーロッパを放浪して、特にパリのサン=ドニ修道院の大聖堂(最初のゴシック建築とされる)に感嘆し、その新しい建築技術である尖頭アーチの技法をイギリスに持ち帰る。作中にくわしくゴシック建築の技法について言及があるので、(やや長いが)一読をおすすめする。<ケン=フォレット/矢野浩三郎訳『大聖堂』 上・中・下 新潮文庫>
2012年政治経済